fc2ブログ

Entries

篠小田の虚空蔵菩薩 2009年1月

篠小田の虚空蔵菩薩  (平・下高久・志農田)

 平市内から新舞子浜に通じる下高久・谷川瀬線と並行して、上荒川から海に向かって田んぼの中を滑津川がゆっくりと流れている。ここら一帯は、肥沃で優良米を産出する穀倉地として知られている。吉野谷鉱泉側を海岸に下がると、鎮守の森の杉の大木に囲まれて虚空蔵堂と若宮と不動堂が立ち並ぶ。この地に鎌倉時代に創建されたとみられる満願寺(真言宗)があったが、廃仏毀釈(一八六八)で廃寺となる。その堂宇の一つであった虚空蔵堂に鎌倉時代後期から南北朝時代頃(一三一〇~一三九〇)に造られた木造虚空蔵菩薩坐像一躯(県指定重要文化財)が祀られている。虚空蔵菩薩像は、五智の宝冠を頂き、右手で智恵の利剣を立て、左手掌上に福徳宝珠を載せ、降魔坐で蓮華座上に趺坐している。江戸時代の享保元年(一七一六)の修理札があるこの仏像の特色は、地方色豊かな作風と、重厚な造形の寄木造りであるという。虚空蔵は丑寅虚空蔵とも言われ、十二支の丑や寅生まれ、また人生最初の十三歳の厄払い「十三詣り」の守り本尊として親しまれている。堂前に虚空蔵菩薩が騎乗される身丈一米強の石造の臥牛像がある。特に虚空蔵信仰は自然災害が多発する地方に広まったといわれるが、先人たちも暴れ川であった滑津川の水害消除、五穀豊穣等を、天空を意のままにする虚空蔵菩薩に祈願したのであろう。志農田が篠小田と書かれた頃は、堤防は洪水防御のため、密集した篠竹の根で護られていたからであろう。今は治水事業が施されて満願。志農田は名のごとく農に安心専念の地となっている。

2009-1